2006年06月15日
祈り。
私が高校生ぐらいの頃に、母が病院で知り合ったおじいさんがいる。
いつも一人でタクシーで来ていたらしい。
長い長い待ち時間、毎回同じような顔ぶれ…。
いつの間にか雑談をするようになり、そのおじいさんがタクシーで1時間以上かけて通っていると言う事を、母は知った。
「どうせ毎月薬を取りに来るのは同じなんだから、届けてあげましょう。」
母がそう申し出をするのに、そう長くはかからなかった。
一代で財を成し、会社の社長となったそのおじいさんは、贅沢な癖に自分にお金を使わない偏屈じじぃ。
一時間以上かけてタクシーで病院に来るのに、カッターシャツや靴下には穴が開いていた。
一度の食事に数万円かける事も少なくないのに、家は隙間風がびゅーびゅー入って冬にはとんでもなく寒いオンボロな一軒家で改築もリフォームもしない。
口が悪くて母に「バカモン!帰れ!」と怒鳴るくせに、怒って帰った母に電話をかけて「また家に来てください…ね?」とお伺いを立てる。
偏屈で、頑固で、怒りっぽくて、自分勝手で、我侭で、金持ち独特の鼻持ちならない部分があって、それでいて優しく、物知りで、たくさんの事を教えてくれた、可愛いおじいさん。
病院に来ていたのは、脳梗塞になってしまったそのおじいさんの、記憶障害の治療薬を受け取りに来るためだったらしい。完全に忘れてしまっている事と、覚えている事が混在しているので、周りは「物忘れが極端に酷い」と思う程度。本人は「忘れてしまっている事に気付かない」ので、なかなか分からないらしい。おじいさんの場合、人との会話の最中にいきなり卒倒してしまい、その卒倒した事を本人が覚えていなかったので発覚したらしい。
それから約20年。母はおじいさんのところに薬を届けるだけから、薬を届けると車代が出るようになり→お金を貰うとそのまま帰り辛いので、ちょっとした家事をしてあげるようになり→そうするとおじいさんの一人暮らしが不憫になってきて、いつの間にか食事の用意やら掃除やらするようになり→行くたびに日給を貰うようになり→「また明日も来てくれませんか?」と言われるうちに、毎日通うようになっていき→いつの間にかそのおじいさんの元を訪れる人たちに「お手伝いさん」と認識されるようになったらしい。
今では母がそのおじいさんの土地や建物関係の書類をほとんど把握し、実印も管理し、時々億単位のお金を動かす話をしていたりするので、ビックリするほどになっていた。
学生の頃は、毎日そのおじいさんのところに通う母が、何をしても話題はそのおじいさんだったので「もうその人の話はいいよっ!」と私が嫉妬するほどだった。けれど、私の事もとてもとても可愛がってくれて…私も大好きなおじいさん。
6月9日、そのおじいさんが入院したらしい。
先ほど母から連絡があった。
原因は再び脳梗塞。
母が朝「今から行きます」と電話をした時点で、様子がおかしかったらしい。
胸騒ぎがした母は、大急ぎで向かったのだけど…既に遅く、救急車の手配、付き添いでバタバタしていたので連絡が遅れた…と言う事だった。今回は小脳が詰まってしまった…とのこと。
小脳には歩行に関する機能や頭を動かしたりする機能があり、またここで手足の協調運動を司ってもいます。脳幹と密接な関係にあり、絶えず情報交換を行っています。飛行場の管制塔のような役割です。小脳が損傷を受けると、フラフラと歩くようになったり、体を垂直に保つことができなかったりします。また、言葉のなめらかさが失われる構音障害も出てきます。 [goo ヘルスケア]
友達と遊びに行く約束も、会う約束もせずに、GWに帰った私が挨拶に行ったのは、このおじいさんと祖母だった。
お年寄りは何があるか分からなくて怖いから…どうしても会っておきたかった。
だって私の子宮外妊娠の話を聞いて、泣いて心配してくれた人なんだもの。
「もう大丈夫だよ」って安心させたかった。
「次に帰って来た時には、○○に食事に行きましょう!」
毎回会ったり、電話で話すと口癖のように誘ってくれる。
今回は懐石をご馳走になった。
次はステーキを食べに行きましょう!と別れ際に言ってくれた。
もう表情も無いらしい。
笑ってもくれない。「このスカタンが!」と、怒ってもくれない。
母がそうメールで送ってきた。「寂しい」と。
あんなにも表情豊かな人だったのに。
でも人間の身体には無限の可能性がある。
「あと2ヶ月」と言われた私の祖父は、それから1年頑張って生きたそうだ。
「これからは寝たきりの植物人間」と言われた私の遠縁に当たる男性は、今車椅子に乗せられて移動出来る程になっている。
あんなに頑固で、頑張り屋なおじいちゃんだもん。
戦争の時にどれ程苦労したか、笑い話にしてくれて教えてくれるおじいちゃん。
きっと…いつかきっと笑ってくれる日が来る。そう信じたい。
頑張れ、頑張れ。きーちゃん、頑張れ!!!
きっといつかまた笑ってくれる日が来るって信じてるよ。
だから泣かない。祈ってる。頑張れ。
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2006年06月15日 15:46
| Category : 日々徒然・・・, つぶやき
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コメント
すぴか☆ちゃんの想いが・・伝わってきたよ。
いっぱいいっぱい・・伝わってきたよ!!すぴか☆ちゃんもそのおじいさんが大好きで、そのおじいさんもすぴか☆ちゃんのこと・・本当に大事に思っていてくれたのね。
私も祈ってます。今回のお話を読んでいて涙がでました。
ほんとうにまたもう1回・・頑張ってほしい!!
せめて・・すぴか☆ちゃんのステキな報告を聞かせてあげれるくらいまでは・・そして、笑って喜んでほしいよね。
祈っています。
おじいさん がんばれ!!みんなの思いが届きますように・・
☆彡 *.:*:.。.: (人 *) 願い事願い事...
投稿者 みゆ☆彡 : 2006年06月15日 16:14
本当に心配ですね・・・私も泣けました。
おじいさん、元気になってまた怒って欲しいし色んな話しして欲しいよぉー。
お母さんやすぴかさんの気持ちは絶対におじいさんに届いてると思います。
頑張っておじいさん!私の思いも届きますように・・・。
投稿者 ひろろ : 2006年06月15日 16:44
二人とも、コメントありがとう。
「泣かない」って書いたけど、やっぱり色々考えると泣いてしまう。
私が送った季節の挨拶状や、お食事をご馳走になったお礼状を一番目立つところに置いて、ニコニコ笑って見てくれていた事を母が話してくれた事。
前の結婚に母が大反対していた時、「親と子の生きるシナリオは違うんやで。子の人生のシナリオは親が書くんじゃない。子が自分で書くんやで。」と諭してくれた事。
その他色々な事があって…。
とてもとても心配だけど、静岡からじゃ何もしてあげられない。
母は病院に付き添ってるようで、電話をしても電源を切っているので、家に帰った頃に電話をして様子を聞いてみようと思ってます。
投稿者 すぴか☆彡 : 2006年06月16日 12:36
私も個人的に仲良くして貰っている元患者さんがいます。
身内では無いから、私は何もしてあげられないけど…
元患者さんは、私の結婚や仕事の相談にいつも乗ってくれていた。今も時々食事する。私を自分の娘みたいに気にかけてくれる。すぴかさん母娘にとって大切なおじいさんなんだよね。
早く元気になれるといいよね。静岡からでもすぴかさんの気持ち届くよ。絶対に!!
投稿者 まきりんご : 2006年06月17日 01:27
「身内じゃない」…そんな事を、これほど歯痒く思うことは無かった反面、母はその「身内」の垣根を越えてしまっていて、ある意味凄いと思う。
だって以前そのおじいさんが救急車で運ばれる時。
「お身内の方だけ同乗してください。」という救急隊員の言葉に、思わず乗り込んだ息子におじいさんが一言。
「ばかもん!お前が来て何が分かる!ふみちゃんが来てくれ!!」
例外的措置として母は救急車に同乗し、病院到着までおじいさんの手を握っていたらしい。
母が若い頃に母方の祖父は亡くなり、私が10歳の頃に父方の祖父も亡くなった。私にとっても、このおじいさんは第三の祖父。元気になって欲しい。
投稿者 すぴか☆彡 : 2006年06月17日 12:49